No.62 2001.3.7
恋の季節の猫がうるさい。
こっちは、電話打ち合わせとはいえ、まだまだ仕事中なんだぞ。
今回はシロアリ退治のVPのナレーションだ。
担当
「・・・えぇ、そうなんです。今回は内容が内容だけに、最初の方はちょっとシリアスな感じでナレーションを入れていただければ・・・」
コチサ
「えぇ、台本読ませていただいています。家といえば最も大きな財産ですから、それをシロアリに食べられたんじゃたまりませんからね」
担当
「そうなんです。ですから映像的にも、シロアリが及ぼす被害を全面に出して・・・」
猫
「あーうー、あぁーうー」
担当
「は?・・・あの、今何か?」
コチサ
「いや、猫が・・・」
担当
「猫を飼っていらっしゃるんですか?」
コチサ
「いや、野良猫が表で騒いでいるようです」
担当
「そうですか・・・それで、そのシロアリの台詞なんですけど、やっぱり今回は悪役ですから・・・」
コチサ
「えーそこはもう、こっちも悪人、じゃなくて悪シロアリになりきって・・・」
猫
「あぁぁーん、うぅぅぅーん・・・」
担当
「・・・・・」
コチサ
「全くぅ・・・春は恋の季節ですからね」
担当
「・・・そうですね、困ったもんですよね」
コチサ
「猫でさえ浮かれる恋の季節に、私たち何やってるんでしょうね」
コチサ
「シロアリの台詞について、話し合いをしてますよね」
担当
「結構まぬけですよね」
コチサ
「仕事ですから・・・」
猫
「あぁぁぁぁーん、うぅぅぅぅーん、ぎゃお!ぎゃお!」
コチサ
「・・・・・・」
担当
「暴れ始めたようでうね」
コチサ
「・・・えぇ元気いっぱいです」
担当
「シロアリの話し、続けます?」
コチサ
「・・・なんか虚しくなってきました」
担当
「・・・そうですよね。こんなに遅く、シロアリの絵コンテみながら、シロアリの気持ちになってるんですからね」
コチサ
「仕事ですから」
担当
「・・・・」
猫
「ぎゃお!ぎゃお!ぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁん!!!!」
担当
「あとは、当日と言うことでいかがでしょうか?」
コチサ
「御意」
担当
「じゃぁお大事に(プツン、ツーツー)」
虚しく響く切断された電話の音・・・・・
もし猫の声が無かったとしたら、夜中に電話で延々とシロアリの声について話し合っていたんだろうな・・・
それもまた、情けなかったりして・・・
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