No.174「早起きは三文の得」  2001.12.3

 写真・・・大根おろし写真・・・あんこ

 早起きは三文の得、もしくは、

 The early bird catches the worm.

 12月最初の日曜日、今日も朝早く散歩をしている時のこと。

 どこからか懐かしい鼻をくすぐる匂いが流れてきます。

ライン

 コチサ

 「ん?これはお母さんのもち米を蒸かす匂いだ」

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 もうこうなったらしめたものです。

 コチサは目をつぶっても、その匂いの基にたどり着くことが出来ます。

 そしてたどり着いた先は・・・

 「町内こども力餅つき大会会場」

 というたて看板華やかな、近所の公園でした。

 10時半からの餅つき大会の為に、こうして近所のおじさんおばさんたちが、会場設営や、もち米の準備などに余念がありません。

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 コチサ

 「こりゃ黙って帰るわけにも行くまい」

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 コチサは餅つき大会が始まるまでそこに居座ることに決めました。

 「このおじさんやおばさんたちの張り切りよう、楽しそうだな」

 「もしかしてお相撲さんも来るのかな?」

 「場所的にはニ子山部屋が近いな」

 「ってことは、貴の浪関、貴闘力関、安芸乃島関、あたりを期待しちゃっていいのかな?」

 などとぶつくさ言いながら時間を潰していると、始まりました。

 イラスト・・・餅つき町内こども力餅つき大会です。

 「え?」

 なんかひっそりしています。

 お相撲さんを始めゲストが一人もいないのは、それはそれでいいのですが、何か活気がないのです。

 よく見ると、主役のこども達があんまり集まっていないのです。

 運営のおじさんやおばさんの数の方が圧倒的に多く、主役のこどもたちはちらほらです。

 それもどこか距離をおいていて、積極的に参加しているって感じではありません。

 お餅がつきあがりました。

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 こんな時、コチサの田舎の小学校だったら、

 「うわー」っと生徒たちが駆け寄り、あっという間になくなってしまうはずです。

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 でもこの公園は・・・

 「さぁ、つきあがったわよ。ほらどんどん食べていってよ。お家に持って帰ってお母さんにあげてもいいわよ」

 しかしその言葉にも、こどもたちはそんなに積極的に行動しません。

 もうこれはコチサが行くっきゃないでしょう。

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 イラスト・・・コチサコチサ

 「おばさん、いただいていいですか?」

 イラスト・・・おばさんおばさん

 「はい、いらっしゃい。あんこ、大根どっちにする?」

 コチサ

 「両方下さい」

 おばさん

 「あら、元気だね。はいじゃぁ、あんこ2個に、大根2個」

 コチサ

 「ありがとうございます・・・わぁー美味しい」

 おばさん

 「そりゃ、つきたてだからね」

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 コチサの満足げな声が届いたのでしょうか?

 イラスト・・・女の子 イラスト・・・男の子 こどもたちがちらほらと列に並び始めました。

 コチサは、ジャングルジムの隣のベンチで、お餅と格闘しながらその様子を眺めています。

 そして、大きく盛り上がることなく、町内こども力餅つき大会は終了しました。

 今朝方、黙々と準備に取り組んでいたおじさんやおばさんたちが、今度も黙々と撤収作業をしています。

 大きな平テーブルの上には、2個づつパックに詰められたお餅が、誰かに食べてもらうのをいまだに待っているようかに佇んでいます。

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 コチサ

 「お疲れ様でした」

 おばさん

 「あら、まだいたの?お餅残っているよ。よかったら食べていって」

 コチサ

 「ありがとうございます。でも結局8個も食べちゃったし、もうお腹一杯です」

 おばさん

 「そう、じゃぁ少しお家に持っていくといいわよ。どうせ処分されちゃうんだから」

 コチサ

 「こどもたち、あんまり集まりませんでしたね」

 おばさん

 「もうここ何年もそうよ。私らが子供の頃は、まだ係りの人が準備しているうちからへばりついていたもんだけどね」

 コチサ

 「田舎でもそうでした。餅つき大会が、楽しみで楽しみで・・・」

 おばさん

 「今の子は他にたくさん楽しみがあるんだろうねぇ。それに親もこんな外でついたお餅をこどもたちに食べさせたくないんだよ」

 コチサ

 「外で食べる方が美味しいのに」

 おばさん

 「世の中、だんだんひ弱なこどもばっかりになっちゃいそうだねぇ」

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 写真・・・臼と杵

 それでも毎年、町内こども力餅つき大会はあるんだと言います。

 おばさんは、

 「まぁ自分たちの楽しみみたいなもんだよ」

 「そのうち、敬老餅つき大会って言われるんじゃないかな」

 とか言って笑っています。

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 そういえば、夏の盆踊り大会も、人が少なかったな。

 浴衣美人コンテストも、ここ数年年配の方々が受賞されていて、いつのまにか看板から「ミス」の文字が消えていたし。

 神田川沿いの告知板に貼ってあった「町内喉自慢大会」の参加者は集まったのかな?

ライン

 ようやく太陽が真上に昇り、暖かさが背中を押してくれる帰り道。

 イラスト・・・学校通りすがりの小学校に、「校庭開放中」の文字が見えました。

 でも通用口から見える日の差し込む校庭には、人の影さえ見えません。

 家まであと5分。

 急に足を速めたコチサに驚いたのか、お餅の入ったパックが「ギュッ」となきました。


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