No.185「讃岐のお正月・2002」  2002.1.9

 写真1・・・金毘羅さま 金毘羅さまにお参りです。
 今年も幸せの黄色いお守りを買うために785段の階段を上りました。
 
 写真2・・・道の駅 帰りに「道の駅」で温泉を発見!

 写真3・・・エピアみかど そこは、「エピアみかど」というまだ新しい温泉でした。
 
 写真4・・・「男湯・女湯」の入り口 そっそくコチサ一家は温泉に入り、お肌ツルツルで帰ってきました。

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 以上、写真で綴る「コチサ家・お正月のある日」でした。

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 イラスト・・・着物コチサ 新年明けましておめでとうございます。

 讃岐の山奥ですっかり山猿として暮らして来たコチサは、まだ讃岐弁が抜けません。

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 イラスト・・・初日の出 元旦の朝

 お母さん

 「サチコぉー、起きなよぉ。お正月の挨拶やでぇー」

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 そうです。

 益田家恒例の朝6時半、一家勢揃いしての元旦のご挨拶が始まります。

 全盛期には家族8人がテーブルを囲んだものですが、今では両親と弟、コチサの4人だけとなってしまいました。

 3人が着飾って勢揃いしている中に、まだ寝巻き姿で半纏を着込んだコチサが髪の毛ぼさぼさで登場です。

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 コチサ

 「おはようさん」

 お母さん

 「何がおはようさんね。全くお前は・・・」

 お父さん

 「まあええ、こいつは子供の頃からこうやったんやから・・・じゃぁ始めるで。みんな新年明けましておめでとう」

 お母さん・弟

 「おめでとうございます」

 コチサ

 「おめでとさん」

 お父さん

 「じゃぁ、みんなでお雑煮いただこうかの」

 コチサ

 「へっ?お父さんそれだけ?」

 お父さん

 「ん?どないした?」

 コチサ

 「いや、別に・・・」

 写真5・・・あん入り雑煮 そして家族はそれぞれに香川県名物「あん入り雑煮」を食べ始めました。

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 お父さんの挨拶は年々短くなってきます。

 コチサが子供の頃は、挨拶が延々10分位続いて、その後子供たち一人一人に新年の抱負を述べさせて・・・

 コチサは早くお雑煮が食べたくてウズウズしていたのに・・・

 今年はそのお雑煮も何かあっという間に食べ終わり・・・

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 お父さん

 「じゃぁ、みんな。今年も良い年でありますように・・・」

 コチサ

 「お父さん、消防団の出初式に行くんでしょ。たまには一緒に行ってあげようか?」

 お父さん

 「なんじゃお前、お前はいつもこの儀式が終わると2階に上がってまた寝るんじゃなかったか?」

 コチサ

 「失敬だなぁ、そんないつまでも子供扱いして・・・」

 お母さん

 「子ども扱いされたくなかったら、ちゃんと洋服着て髪を梳かして降りて来なさい」

 お父さん

 「お父さんは出初式はもう行かんぞ」

 コチサ

 「へっ?」

 弟・浩二

 「じゃ、お父さん。行ってくるで」

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 そっか・・・

 消防団の仕事は弟に引き継いだんだっけ・・・

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 コチサにとって今回の帰省は実家が新築してから初めての帰省でした。

 何十年と住み慣れたあの古い家ではなく、まだ木の香り漂う、新鮮で清潔な部屋でした。

 お風呂場やトイレも、もう寒風染み入るなんて事もありません。

 家具や食器にいたるまで全部新しくなっています。

 戻ってきた当初こそ

 「すごいね」

 「良いね」

 と騒いでいたコチサですが、二日もすると・・・

 押入れの奥から、昔の半纏と学生時代に使った煎餅布団を取り出しベットに重ね出しました。

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 浩二

 「姉ちゃん、何するん?」

 コチサ

 「なんかな、落ち着かないんだよ。新しくなるのも良いけど、コチサはたまに帰ってくるから実家が変わってると寂しいんだよ。毎日暮らしてる人には迷惑な話だけど、ごめんな」

 浩二

 「ええで、姉ちゃんの好きにすればええで」

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 2001年は東京で早起きの習慣がついたコチサだから、実はここでの早起きはそんなに苦になりません。

 それでもコチサは元旦に、子供の頃のようにギリギリに起きて、寝巻きに半纏のぼさぼさ頭で降りて行きました。

 何も変わって欲しくなかったから・・・

 変わって行く事を認めたくなかったから・・・

 でも、お父さんの挨拶は短くて、「早くお餅を食べたい」と文句を付ける間もなく終わってしまって・・・

 ふと見れば、そのお父さんの顔は深い皺が刻まれていて・・・

 お母さんはいつのまにか腰が曲がって・・・

 体を伸ばすようにテーブルに張り付いてお雑煮をほおばっていた弟は、今ではコチサやお母さん、お父さんまで追い越すほど背が伸びて・・・

 へん!

 コチサは時間と戦う世界のMCだい!

 懐かしい思い出はコチサが絶対に守るぞ!

 写真6・・・マル益を輝かせながら、出初式に向かう弟 「丸に益」の字がついたハッピに身を包んだ弟が声をかけてきます。

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 浩二

 「姉ちゃん、出初式、見にくるか?」

 コチサ

 「行かん。コチサは正月の挨拶が終わったら2階に戻ってまた寝るのが決まり事なんや」

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 コチサは頑なに時の流れに抵抗することに決めました。

 朝日がまぶしいほど差し込んで一向に眠れない煎餅布団の中で、コチサは弟の車がエンジンの音高らかに出発していく音を聞きました。


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