No.252「コチサの夏休み!」  2002.8.28

 写真・・・日原鍾乳洞1

 残暑がぶり返してきたので思い出しました。

 そうです、今年コチサは本当に久しぶりに「夏休み」を取ったのです。

ライン

 コチサ

 「という訳で、今日から夏休みです。よろしく」

 社長

 「わざわざ出社してきて、そんな挨拶しなくていいよ」

 コチサ

 「いや、義理堅いもので」

 社長

 「っていうか、行くとこないんじゃないの?」

 コチサ

 「あ、あるわい」

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 特に陽射しが強かったこの日、コチサはカーディガンを持って電車に乗り込みました。

 電車に揺られること2時間余り・・・

 そしてバス・・・

 写真・・・日原鍾乳洞2

 東京都西多摩郡奥多摩町日原の「鍾乳洞」に到着しました。

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 コチサ

 「平均気温10度、避暑には一番だよね。カーディガンも持ってきたし」

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 写真・・・日原鍾乳洞3

 入場料を払って、いざ洞窟探検の旅へ・・・

 「ひやぁー、寒い」

 そこはコチサがこれまで見たことも無い世界でした。

 鍾乳石は1センチ200年かかると言われています。

 雨水が地表からしみこみ、石灰と一緒に洞窟に流れ出て鍾乳石になります。

 ここは何十万年、何百万年の悠久の歴史のステージです。

 写真・・・日原鍾乳洞4

 岩石評論家のコチサは、一つ一つの石や岩盤のチェックに余念がありません。

 人の顔と同じように、岩にも皺があります。

 その皺一つ一つに、その岩の歴史が苦悩が誇りが隠されています。

 その苦悩や歴史や誇りを一つ一つ見極め、白日の下に晒すのが岩石評論家であるコチサの仕事です。

 鍾乳石と共に泣き、笑い、怒り、悲しむ・・・

 時にそれは辛い作業ですが、それがコチサの撰んだ岩石評論家の道です。

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 子供1

 「見てぇ、あのお姉ちゃん、鍾乳石の前で泣いてるよ、変なのぉ」

 お母さん

 「しっ!あれは岩石評論家の大先生よ。ああして鍾乳石と共に泣いて笑って、歴史を成仏させてあげているのよ」

 子供2

 「じゃぁあのお姉さんって偉いの?」

 お母さん

 「そうよ、世界中の鍾乳洞を廻って、鍾乳石を成仏させている偉い先生なのよ」

 子供1、2

 「ふーん・・・」

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 たまたま今日、岩石評論家のコチサに出会ったこの子たちは幸せです。

 鍾乳石と対話するコチサを見、歴史のうねりを正す姿を目の当たりにしたのですから・・・

 入場料以上の恩恵を得たことでしょう?

 (じゃ、じゃぁ、なんで世界の岩石評論家コチサがわざわざ600円の入場料を払って洞窟に入っているんだぁ?)

 写真・・・日原鍾乳洞5

 日原の鍾乳洞はとても広いです。

 かなり急で子供には危険なんじゃないかという狭い階段を昇ったり、地の果てに落ちそうになりそうな岩を超えたり・・・

 もともと根気の無いコチサは、工程の3分の1くらいで飽きてきました。

 岩石評論家も飽きてしまいました。

 岩なんて全部同じに見えちゃいます。

 写真・・・日原鍾乳洞6

 見渡す限りが、岩、岩、岩です。

 寒いし・・・

 お腹も減ったし・・・
 
 写真・・・日原鍾乳洞7(水琴窟)

 とりあえず、水琴窟の横に陣取り一休みします。

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 子供1

 「あーさっきの偉いお姉さんだぁ」

 コチサ

 「こんにちは」

 子供2

 「もう鍾乳石調べないの?」

 コチサ

 「飽きたの」

 子供1

 「ふーん、何やってるの?」

 コチサ

 「水琴窟の音を聞いているの」

 子供2

 「聞こえないよ」

 子供1

 「お前が静かにしないからだよ」

 子供2

 「お姉さん、聞こえる?」

 コチサ

 「聞こえるわよ。周りがどんなにうるさくたってね。心の声で聞こえるの」

 子供1

 「心の声?」

 コチサ

 「そう、正直者だけが聞くことが出来る心の声よ」

 子供2

 「僕も聞こえる?」

 コチサ

 「君は正直者?」

 子供2

 「ううん」

 コチサ

 「じゃぁ聞こえないかもね。お姉さんのような正直者じゃないと・・・」

 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 写真・・・日原鍾乳洞8

 なんだ、結構楽しい夏休みじゃない。

 一時の涼しさと、子供たちとの嘘八百の会話、そして聞こえなかった水琴窟・・・

 出口で新しく入場してきた女の子とすれ違いました。

 女の子

 「うわぁー、ここ冷房効き過ぎぃー」

 この言葉に、何百万年の歴史の鍾乳洞がくしゃみをした気がしました。
 
 写真・・・日原渓流釣場にて


<BACK NEXT>