10年来のお付き合いの美容師のモイジャさんが北海道に帰ってしまって数ヶ月が経ちました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサA 「だめだ、もう我慢できない」 コチサB 「じゃぁ、切りに行けばいいじゃん」 コチサA 「どこに?」 コチサB 「いつものところでいいじゃん。モイジャさんが次の担当者さんを紹介してくれたんだし・・・」 コチサA 「でもなぁ、不安なんだよ。10年だよ10年。それだけの時間をかけてモイジャさんはやっとコチサの癖髪を自由に操ってくれるようになったんだよ」 コチサB 「じゃぁ北海道まで追いかける?」 コチサA 「いずれね。コチサが偉くなったら、自家用機で向かうようにするけど今は無理だね」 コチサB 「普通偉くなったら、わざわざ自分が通わないで、専属に雇ちゃったりするもんだけどね。そこまで思いつかないところが結局偉くなれない事を証明してるね」 コチサA 「違わい!コチサは偉くなっても、ふんぞり返って人を呼びつけるような人間になりたくないだけだい!」 悩みに悩んだ末、モイジャさんの紹介もあり、引き続き同じお店に通うことにしました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 店長の新大久保さん 「いらっしゃい、来てくれたんですね、ありがとうございます」 コチサ 「なんの、なんの」 新大久保さん 「モイジャのお客さんがこうして来てくれると本当に嬉しいんですよ」 コチサ 「他のお客さんも来てくれていますか?」 新大久保さん 「えぇ皆さん・・・でも何名かはお亡くなりになった方もいらっしゃるんですよ」 前回、コチサがモイジャさんに最後の髪を切ってもらっている時・・・ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「いいんですか?あの男の子、コチサより先に来てずーと待っていますけど・・・」 モイジャさん 「あぁ彼は、今パーマをかけている彼女の彼氏なんですよ。僕に見せに来てくれたんですよ」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 彼女というのは、モイジャさんの骨髄移植の後輩だそうです。 励ましてくれたモイジャさんに、「こんなに元気になりました」と彼氏を連れて元気にやってきたそうです。 元気にはしゃぐ彼女とは対照的に、彼氏は店の隅の椅子に黙ってニコニコ座っているおとなしい青年でした。 コチサ 「まさか、あの彼女じゃないよね・・・」 新大久保さん 「えっ、何ですか?」 コチサ 「いや別に・・・」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: その彼女だけじゃなく、このお店にはモイジャさんを慕って、骨髄移植をした方がたくさんやって来ます。 自身も10年前に慢性骨髄性白血病を発病、急性に転化したほぼ同時期の8年前に骨髄移植を受けたモイジャさんに髪を切ってもらうことは、心の悩みまでリフレッシュしてくれる効果があるのだと思いました。 お互い再発を気にかけながもら、励ましあって強く生きる・・・ 不幸にして再発をしてしまう人もいるけど、そんな時も自分自身を見失わないように・・・ モイジャさんは北海道に帰ってリンゴ園を継いだ今も、そうした活動を続けているそうです。 モイジャさんの骨髄移植の為に東奔西走してくれたお父さんが、農園の木の下で倒れているのが発見されたのは去年の6月でした。摘果作業中の脳出血だったそうです。 迷うことなく美容師の道を捨て、農家を継ぐ決心をしたモイジャさんは2ヵ月後には北海道に帰っていきました。 農家の経験の無い素人同然のモイジャさんを、近所の人たちが支えてくれ、美味しいリンゴを収穫したのはその秋の事でした。 お父さんからモイジャさんへ・・・親子の命を紡いだ合作です。 そのリンゴはコチサも一箱買わせて頂いて食べさせてもらいました。 少ししょっぱかったのは、ちょっとばかりのコチサの感傷が入っていたからかも知れません。 新大久保さん 「これ知ってます?」 コチサ 「えっ?・・・わぁーモイジャさんだぁ」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: それは去年の12月15日の北海道新聞の「人に詩あり」というコーナーでした。 リンゴの木に登って大切な命を娶るように、実を収穫しているモイジャさんの写真が載っていました。 元気そうです。 モイジャさんの人生ドキュメンタリーを温かい視線で捉えた記事も心を打ちました。 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: コチサ 「元気に頑張ってるんですね」 新大久保 「彼の人柄だね。どこに行っても愛されて・・・(ウルウル)」 コチサ 「おいおい店長、泣くなよ。涙で歪んだ目で髪を切られちゃ失敗作になっちゃうでしょ」 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 今年のリンゴはモイジャさんの完全一人旅の作品です。 コチサはまた9月に一箱注文の予定です。 で、コチサの髪型は ・・・???・・・ ということで、今回はお終い・・・ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 新大久保さん 「ちょ、ちょっと、そこで終わらせないで下さいよ。なんか失敗作みたいじゃないですか」 ******** 常に最高の技術と、やすらぎの心を提供する。 北青山・美容室「ヘアーモイジャ」! 今日も貴方の髪と心をプロデュース。 大満足の一日をいかがですか? ******** コチサ 「これでいいかな?」 新大久保さん 「ありがとうございます、宣伝までしていただいて・・・ところで、髪は気に入っていただけたんでしょうか?」 コチサ 「もちろんです(^o^)v」 |
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