コチサ
「今年も終わりですなぁ〜」
ご隠居
「コチサさんも一年ご活躍されて・・・」
コチサ
「いやぁ、ご隠居こそお元気で過ごされましたことをお慶び申し上げます」
ご隠居
「コチサさんこそ、今年は定期検診も3ヶ月から6ヶ月に伸びたそうで、もうすっかり健康体でわたしも嬉しいですよ」
コチサ
「ありがとうございます」
ご隠居
「ところで、今日は何か?またネタ不足ですか?」
コチサ
「いや、今年も押し迫ってきたので、恒例の10大ニュースをご隠居と一緒にと思いまして・・・それになんだか無性にご隠居に会いたくなってしまったので^-^;」
ご隠居
「それはそれは嬉しいことを・・・じゃぁ先ず何からでしょうかね?」
コチサ
「ところがですね、いろいろ今年を振り返っても大きなニュースが10個も思い浮かばないのです^-^;」
ご隠居
「それはそれは・・・」
コチサ
「何か、何にもしてなかったようで情けないっす^-^;」
ご隠居
「それは違いますよ、コチサさん」
コチサ
「へっ?」
ご隠居
「それだけコチサさんのこの一年が充実していたってことですよ」
コチサ
「どゆこと?」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ご隠居は、一年を振り返ってみて10大ニュースがぽんぽんと浮かばなかったこと、それは一年を通して安定した生活を送った証拠だといいます。
山あり谷ありの一年ではなく、充実した毎日を欠かさず積み重ねたからだといいます。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ご隠居
「高いレベルでの安定をしていたから、10大ニュースが浮かばないんですよ(^o^)」
コチサ
「でも、そういう理屈でいったら、低いレベルで安定しててもやっぱり10大ニュースが浮かばないんじゃないっすか?」
ご隠居
「違うわ」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
低いレベルから周りを見ていたら、小さな刺激にさえ反応し、あれもこれも自分の中での大きな出来事として受け止めてしまうから、10大ニュースどころじゃなく、50も100もニュースが出てくるのだと、ご隠居は言います。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
コチサ
「ふーん、そんなもんすかねぇ〜」
ご隠居
「そんなもんなんすよ^-^;・・・ちなみにコチサさんは、10大ニュースを考えた時にいくつ浮かびました?」
コチサ
「えーと、先ずは、今年は大道芸の師匠を思いきってチェンジしたこと(^o^)」
ご隠居
「長年の恩師に見切りをつけて、実益のある師匠に鞍替えしたって話ね」
コチサ
「ち、違わい・・・そんな身も蓋も無い言い方はよしとくれよ。こっちもいろいろ悩んだんだから・・・」
ご隠居
「で、他には?」
コチサ
「トリプルコンスタント(^o^)」
ご隠居
「何それ?年寄りには横文字はわからないから、わかりやすく説明してね」
コチサ
「あのね・・・」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
先ず、MCの仕事を一年中コンスタントにいただけたということ。
そして、一年中コンスタントに一日も休まずに筋力トレーニングを続けられたということ。
最後に、走る大会走る大会と、コンスタントに記録が向上していったということ。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
コチサ
「この3つのコンスタントを合わせて、トリプルコンスタントというのじゃ(^-^)」
ご隠居
「ねっ(^-^)」
コチサ
「ん?」
ご隠居
「今のニュースにしたって充実している証でしょ」
コチサ
「そういえばそうだね」
ご隠居
「他には?」
コチサ
「他には・・・無い・・・もう思いあたらないんだ。そりゃ田舎から親戚が上京してきたとか、長年の友だちに久しぶりに会ったとか、誰かが結婚したとか離婚したとか、出産したとか入学したとか成人したとか・・・就職したとかリストラされたとか・・・周りでは確かにいろいろあったけど、どれも10大ニュースとして粒立てるものでなくなっているんだよ」
ご隠居
「コチサさん」
コチサ
「ん?」
ご隠居
「きっと来年も再来年も、この先ずーとこのままの調子が続くと思いますよ」
コチサ
「へっ、何で?」
ご隠居
「逍遥遊ってご存知?」
コチサ
「ショーヨーユー?フーアーユー?みたいなものですか?」
ご隠居
「荘子の編名ですけどね。「何ものにもとらわれない自由気ままな境地に遊ぶ」ということだけど、悪い意味ではないのよ。自己にはそれぞれコチサさん言うところのブニがあるってことなのよ」
コチサ
「ブニですか?」
ご隠居
「その自分に分け与えられたブニを素直に受け入れること、それが大切なことなの。自己に与えられたブニというものをわきまえず、自己の世界観で周りを見てはダメよ」
コチサ
「???」
ご隠居
「この世にはさまざまな世界があって、それぞれの世界における価値はみんな等しいの。見下すものでも、羨むものでもないの」
コチサ
「ご隠居ぉー、なんだか眠くなった(>_<)」
ご隠居
「知らないうちに長い時間をかけて、あなたはゆっくり自分の人生の基礎をしっかり固めていたんですよ。今年はその基礎からようやく芽が出ただけなの」
コチサ
「ふーん(+.+)(-.-)(_ _) ..zzZZ」
ご隠居
「じゃぁ私はこれで、良いお年を・・・」
コチサ
「ちょ、ちょっと待って下さい、まだ話は終わってないっす、それにご隠居・・・コチサはご隠居にお悔やみを・・・(+.+)(-.-)(_ _) ..zzZZ」
。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・
ご隠居はこの街に18歳で嫁いで来たそうです。
ご隠居はコチサと同じ、田舎の田舎そのまた田舎の出身です。
旦那さんになったヒロシさんは、おしゃれな都会人、俳優になってもおかしくない二枚目と言われていたそうです。
ご隠居の、今の凛とした立ち居振る舞いは、持って産まれたものではないそうです。
嫁いできてはじめて見た、家風呂・・・
ご隠居は、それが人が入る風呂とは知らずに、大きなお鍋の元だと思い、そのお湯を小さなお鍋にすくって味噌汁を作ろうとしたそうです。
都会人には、田舎の振る舞いは全て「下品」と言われ、体が金縛りにあったように動かなくなった時もあったといいます。
そして、ヒロシさんが突然倒れて、両目の視力と半身の自由が失ったのは、まだ二人とも40代になったばかりのことでした。
。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・
そしてそれから45年。
今年の10月に、ヒロシさんは88歳の天寿を全うしました。
コチサ
「コチサはいつもいつも自分の事ばっかりで、ヒロシさんのお悔やみを言う事も出来なかったよ。まっいいか、また今度会った時に忘れないように言わせていただこう」
。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・
ご隠居とヒロシさんの息子さん、ヨシタカさんから手紙が届いたのは、昨日の事でした。
ご隠居がこの17日に亡くなったこと。
葬儀は近親者だけで既にひっそりと済ませたこと。
ご隠居は89歳だった事が書かれていました。
。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・
ご隠居!
じゃぁ来年は、コチサは誰と10大ニュースの選考をするのさ。
旦那さんがなくなってたった2ヶ月、よっぽど会いたかったんだね。
。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・
コチサは、今年の10大ニュースを変更しない事に決めました。
「逍遥遊」はまだよくわかりませんが、ご隠居がそうする必要は無いと言っている気がするので・・・
でも、胸が痛い・・・
。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★、。・
※これまでご隠居のモデルになっていただいた、
ナミおばあさんのご冥福をお祈りいたします。