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FILE4-ナルシストドクター
3/30days
コチサのペッパーフレンズ●益田沙稚子 


つい背伸びをするコチサは、偉そうに現役ドクターと「命の尊厳」について語っちゃたりします。そんな無鉄砲なコチサと真面目に対峙してくれるドクターFは、いざというときはコチサの尊厳を守ってあげるから心配するなと太鼓判を押してくれています。
ドクターっていいな。そんな気分の時に第二の新人ドクターからメールが。
「今日患者を空に送り、今クラシックに身を委ねワインを飲んでいます」よせばいいのに例によって返事を書いたからさぁ大変。その後二日と置かずに陶酔したメールとランボーだったりリルケだったりの和訳詩の添付。
何となく解る気はします。医療という人の死に直面した雑然たる生活、極限状態の人間の慟哭、糞尿にまみれた日常。その中で暫しの現実逃避をネットの架空の世界に求める。特にコチサはウンチもしないしね。でもちょっと違うんだね。ネットの世界も今は現実。人々の嘆き悲しみのある猥雑な空間。別な人間になって一時の空想に浸るものではないよね。だって動かない指でやっとキーを押す人たちも両方の世界に生きている。ワイン一杯と手近な和訳詩で悦に入られたくない気がする。
「いつもメールありがとうございます。添付される和訳詩は残念ながらコチサの心に沁み入りません。先生の心を乱す日常を既存の詩集で置き換える事が出来るなら、先生の日常も普通の既存の日常と感じられてしまいます。小学生の詩に時として感動させられるのは自身の感情を自らが歌ってるからに他なりません」
辛口コチサ!またやってしまった。当然、それ以来メールは来ません。先生は「何も解らない奴にメール送って損した」としか思っていないでしょう。そして今日もまた、どこかの女の子のHPに向けて、偉大なリルケの詩が衛星メールのように飛び回っているのかな。
ドクターFは、この話しをしたらどんな診断をくだしてくれるでしょうか?


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裾を気にするコチサ