「コチシム」第9章次点作品

第9章のナイスな「コチシム」作品群

相変わらずいろんなパターンでの
応募をいただいています。
一時の純粋文学路線志向から、
インパクト勝負の方向に変わりつつあるのかな?


[第9章次点作(その1)]
(説明無用の「グッド、ぐっど!」さんの作品です)

カッちゃん、おめでと、ディレクターだって?偉くなったもンねェ。。このォ、目が笑ってるよォ。。いい仕事があったら、こっちにもまわしてちょうだいね、お願い。

あたし?まあ、ボチボチと。でも、会社から廻ってくる仕事ったら、誰がやってもおんなしようなのばっかでさ、あんまし気合が入んなくって。
たまには、めいっぱい声を使ってみたくもなるわよ。これぞコチサってヤツを、イッパツ。。

まあね、お金を貰ってする仕事にイチイチ文句はいえないよね、いちおうプロなんだし。いくら趣味みたいに技を磨いてたって、そんな自己満足につきあってくれる人なんか。。。

え?ちゃんと聞いてくれて、その上とっても感謝されたり、ですって?
ああ、ボランティア活動ね。そっか、そのテがあったか。面白いのあるかしら、あたしにもできそうなので?。。

・・・・・・・・・・

そりゃ驚きましたよォ、事務所って、聞いてきましたからね。。。ドアを開けたとたん、コワモテのお兄さんたちが一斉に振り返るわ、「仁義」の額縁と「菱」の代紋が目に飛び込んでくるわ。。

そうですか、もう解散するんですか。。組同士の関係で仕事が振り分けられちゃってて、勝手によその縄張りに引越もできないんですね。。この組のシマに居着いた不法入国者グループのせいで、警察の締め付けがきつくなって、以来思うような商売ができない、と。

案外キビシイんですね、この業界って。。
(どこも似たようなもんだね (^_^);;)

ええ、お察ししますよ、いきなり転職じゃ大変ですものね。。だいたい普通の人たちだって、職探しが大変な時期ですもの。あ、その、べつに皆さんが普通じゃない、って言ってるわけじゃなくて(やべー!)。

はい、少しでもお力になれたらと思いまして。。みなと署にいる幼馴染みのカオルの紹介で。。
あのコ、カオルってのは署内での通称で、ホントは「あつこ」っていうんです。そう、浅野あつこ。。
いえ、タカヤマ刑事やオオシタ刑事とは今日が初対面で。わざわざ一緒にきてくれるっていうから、あたしってば捨てたもんでもないわ、なんて、勘違いを。。
あら、やだわ、関係ないわね、オホホホホ。。。

それじゃ、さっそく今日のトレーニングを始めましょうか。。
えっと、お配りしたのが、全文をプリントしたものです。まずは御手本として、コチサボイス「聞き取り編」のテープを流しますので、プリントを見ながら聞いてくださいね。
それから、センテンスごとに分けて練習していきましょう。。

うわ!びっくりするじゃない、オオシタ刑事、どうしたんですか突然?
は?銀星会が殴り込みを掛けてきてるんですって?ひぇー!!

冗談じゃないわ、そっちはタカさんとユージさんにまかせますから。。
もう来てるって!?もォ、ちゃんとオモテに「出入り禁止」の標識でも出しといてもらわなくっちゃ困るんですけど。。

皆さん、事務所で喧嘩はダメですよッ!今日からはちゃんとカタギの生活を始めるんでしょ!!あたしなんざ、喧嘩なんて一度もしたことが。。
え?腕まくりしてないでさっさと逃げろって?そいつは残念。。。

・・・・・・・・・・

冷たさを増してきた風が運ぶ流しの呼び声は、まだときおりつっかえたり、ドスを利かしたりもしながら、静かな晩秋の街を渡っていった。
「おばあちゃんも、きっと応援してくれてるよね。。」
コチサは、社会復帰を目指す男たちの前途を祈りながら、焼き芋のぬくもりを両手に包んで、いつまでもじっと耳を澄ましていた。


◆コチサの寸評

オールスター総出演とのこと。
残念ながら、コチサはこの分野には弱くてわからなかったの。ごめんなさい。
どうも審査員がコチサ一人の為、知らない分野には評価がつけられなくなってしまいます。

前回の「馬場さん」はコチサと感性があってその後も盛り上がっているんだけど・・・・
最近の「グッド、ぐっど!」さんの作品傾向に一言。「伏線に重きをおきすぎるあまり、逆に本線が伏線を支える伏線化しているような気がします」
「グッド、ぐっど!」さん、コチシムも後三回。コチサは1ファンとしても本気で応援してるよ。


[第9章次点作(その2)]
(「板橋健」さんの作品です)

3月1日
コンピュータを買った。
だから今日からキーボードの練習を兼ねて日記をつけてみようと思う。
ソフトは「ページメーカー」を薦められて買った。高かった。
でもワープロソフトよりいいよ、って販売員さんが言ってた。
操作を覚えるのも、文字を打つのも大変。
ここまでで、もう2時間も経っている。
電源を切ると消えるというから、このまま点けて寝る。

3月3日
セーブすれば電源を切ってもいいんだって。
セーブした。

3月5日
事務所は楽しい、みんなともうまくやってる。
今日は恵子が「お花見当番」に任命された。
またみんなが思い思いに着飾って派手な宴会が始まるんだろう。
私は今年は「逆さ外郎売り」を形態模写を含めて披露する予定。

3月10日
地方CMも含めて3本のナレーション撮り。
でも合計で3時間もかからない。
美味しいところをとって音声さんが編集してくれる。
「そこいただきま〜す」という言葉がまさにぴったり。
なんか私の体がつぎはぎされているみたい。

3月12日
やっぱりそうだ。仕事は個人にではなく事務所に発注される。
その仕事を誰に振り分けるかは、事務所の方針だ。
だから大きな事務所にいること。
事務所の上司に気に入られること。
この二つが成功を成す秘訣だ。

3月15日
私のレギュラーだった、「新曲発表告知MC」が恵子に移った。
今回だけの特例措置とマネージャーは言っている。
それはそれでいい。
魅力のある仕事でも無いし。
悲しいのは「今回だけの特例措置」ということ。
恵子が上司に委ねた体の代償は「15秒CM」一回分としか評価されないのか。
そして私の声は恵子のあまりにも虚しい評価に匹敵するのか?
「15秒CM1回分=恵子のDカップ=コチサの声」
こんな図式が成り立ってしまうのか。もっとつけ加えると、
「15秒CM1回分=恵子のDカップ=コチサの声=不細工な上司の肉欲」

3月20日
年度末を期にまた12名の女の子が辞めた。
そして4月になれば、またたくさんの夢を持った女の子たちが入ってくる。
夢を食って生き続けるのは「バク」だけど、若い女の子の夢だけを食うということでここはもっと悪質だ。

3月22日
大きな化粧品会社のレギュラーが来た。
顔つなぎにお食事を・・・・・
ついに、というか、やっぱり私も特別では無かったというか・・・・
ここで「特別」という意地を持ち続けるか、「普通」で妥協するか?
取り合えず、寿司だけは食べておこう。

3月25日
練習しよう!
いろんなことを考えていたら、全然練習していない自分に気がついた。
発声練習はほんとに気持ちがいい。
久しぶりにいい汗をかいた。
なんか「敵は自分自身の中にいたんだ」って感じ。

3月26日
「艱難辛苦」(ワープロだと難しい字が簡単に出ていいね)の道を行く決意。
昨日の発声練習がもやもやを吹き飛ばしてくれたのね。
辞表を提出。
「この世界で働かせなくしてやるからな」
マネージャーのこのセリフ、何処の世界でもあるんだね。
真に受けても、戦うにしても、どうせこの世界で働けなくなるんなら戦うほうがいいかも。

3月27日
「この世界で働けなく」なりそうなのはマネージャーの方らしい。
辞めてった女の子が、芸能週刊誌に告発した。
社長が話したいって言ってる。

3月29日
社長レベルまでくると、さすが大物。
難しいところね、本当の狸か心底社員を思っての言葉か、判断がつかない。
「うみせんやません」を相手の神経戦を延々続けるのは無駄。
「円満退社の独立支援」という提案を受けておくのが無難かな。
そういえば最近はドラマも「勧善懲悪」路線が少なくなって来ている。
玉虫色の決着の中、自分を何処において勝ちと判断するかが難しいところ。

3月30日
今日は日曜日ではないけど「3月30日の日曜日」という歌が毎年思い浮かぶ。
フランシーヌは抗議のため自ら油をかぶって命を絶ったけど、コチサはもしかしたら少しうまく立ち回ってしまったかな?
でも答えを出すのはまだ早い。
きっとこれからも苦しい生活と、素敵な出会いがたくさんたくさんくりかえされるんだろうな。
19××年3月30日「コチサ革命」


◆コチサの寸評

直球だね。
「健さんの日記シリーズ」は飛び飛びで3回目のご応募でした。
今回は「コチサの苦悶」が中心なので日記という形式はうまくはまりました。
健さんはいつもいつも直球勝負の方でしたが、後半をコチサ好みに多少変化球にアレンジしてくれた併せ技で掲載させていただくことになりました。
ただナレーションの世界はこんなにどろどろじゃないやい。
実力主義のもっとしっかりした世界だよ。
「3月30日の日曜日、パリの朝に燃えた命ひとつぅ〜フランシーヌゥ〜」
コチサも持ってるよ、この曲のCD。


[第9章次点作(その3)]
(謎の新人「つぅ」さんの作品です)

「おはようございま〜す」
私はいつものように夕日が差し込む事務所に顔を出した。
「やぁコチサ、今日は早いね。さ、これが次の仕事だ。さて今日は..」
「ラジオ○○で収録です。」
「いや、ちょっと待て確かスタジオ○○で打合せのはずだぞ。」
「そ、そんなこと聞いてません。」
「ばかな、ほらここにも書いてある。」
「だって」
「だってもくそもあるか!自分のスケジュールくらいしっかり管理しろ!」
 .
 .
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「おつかれさま〜」
「いやー、コチサ、今日も良かったよ。来週もよろしく。」
「ありがとうございます。あれ、あの子は?」
「ああ、新しくできたプロダクションの子の売り込みだが、無駄だね。」
「下手なんですか?」
「そうじゃないんだが、ああいう所の子はちょっとね。」
「はぁ」
 .
 .
 .
「おや、コチサ、浮かない顔してるね。ああそうだ、今度この仕事やってみないか?いやなに、簡単な仕事だよ」
「ええ、えーと、え、これ一言だけですか?」
「ああ、それでギャラはちゃんと出るんだからおいしいだろ?とりあえず君ん所に頼んでおくのが無難だからさ」
「でもそれって..」
「まぁまぁ、つまんないこと考えないでさ」
「えぇ..」
 .
 .
 .
何だかなぁ。確かに仕事は来る。それなりに楽しくもある。でもこれがあたしの望んでたこと?そうじゃないはずよ、そうじゃ..
あどけない顔をして眠るプロデューサー、浩の横でそんなことを考えていたら眠れなくなるコチサであった。

そんな釈然としない日々を送り、いつものように仕事帰り朝食を食べていると浩が言った。
「なぁ、コチサ、そろそろそんな仕事やめて俺と結婚しないか?俺もAD時代とは違いお前一人くらい食わしていけるぞ」
「ちょっとまってよ。”そんな”仕事って言い方はないんじゃない?」
「いや悪かった。でも別にうちの事務所じゃお前が今やめても大丈夫だぞ」
「あなたは私のことをそんな程度にしか思っていなかったのね」
飲みかけのカフェラテをたたきつけるように置き逃げるように飛び出した。悔しかった。情けなかった。
「いけない。このままじゃいけない。もう一度一人で最初からやり直そう。私じゃなきゃできない仕事が絶対あるはずよ。そう、確かに浩に甘えすぎていた..。絶対に世界のコチサになってやるわ」

東京に出てきたときのような強い決意で再び恩師織田の門を叩くコチサであった。


◇偽コチサの寸評

今回は突然白馬にまたがり彗星のごとく現れた(自分でそこまで言うなっ)「つぅ」さんの作品です。ちょっと臭いところもあるけどコチシム王道に戻してくれた上に、HTMLのタグまでつけて応募していただきました。(手抜きをしたかったから選んだ訳じゃないのよ)
これ、これなのよ、求めていたのは。
ステキすぎよっ。


◆コチサの寸評

おいおい、皆さんあの手、この手で・・・・
今回の新人さん「つぅ」さんは、「コチシム育成作品」の全てのパートをHTMLで送ってくれました。
コチサとしてはそのままファイルをコピーすればいいという思いやりです。「コチサの寸評」まで付けてくるとは・・・・・
でも、育成作品にはならない。
まず、何でコチサが「浩」なんていう男と暮らしてるのよ。コチシムは日常の香りのする恋愛は御法度なんだよ。
あと、コチシムは基本的に「駅伝」的なところがあるから、次にバトンを渡す人に対する責任があるのよ。
また「織田の穴」に戻ったら、次の章の進展に支障を来すでしょ。
「つぅ」さんは、突然コチシムに出会って、大変気に入ってくれて、是非応募したいと事前にメールまでくれて立候補してくるなどとっても律儀な人で、次回の作品を期待する観点から今回は公開添削とあいなりました、とさ。