「コチシム」第10章次点作品

第10章のナイスな「コチシム」作品群

今回は第1章以来の、
短い作品の花盛りでした。
応募数もいつもよりは多めで、
やっぱり文章量と応募数は反比例するのね。


[第10章次点作(その1)]
(今回は張出にまわった東の横綱、厚木のコウちゃんの作品です)

「おい、このキーボード、ベトベトで動かないぞ!」
「拭けばいいんだよ」
「お前な、アイスクリームを食べるか、コンピュータをいじるかどっちかにしろ!」
「メールを読んでるとな、つい集中してアイスが溶けちゃうんだよ」
子供が親に買ってもらったブロックで一生懸命ものを作るように、山猿コチサは元社長に買ってもらったコンピュータにはまってしまった。
「これお前が作ったのか?」
「ん?そだよ」
「何だ?これ」
「ん?ホームページ!」
「この写真の女は?」
「ん?コチサだよ」
「きれいじゃないか」
「まぁね」
「とてもアイスクリームを食べて、ベトベトの手でものに触る様な奴には見えないよな」
「知的に見えるよね」
「自分で言うな!」

「どうやってこんなホームページなんて作ったんだ?」
「本を読んでな」
「出来るのか、それだけで?」
「あとは、根気だな」
「そうか、気に入ったことだけは、こつこつやるもんな、お前は」
どちらかというと、短距離より長距離、切れ者というより愚鈍、テキパキというよりひとつひとつ・・・・そんなコチサの性格が試行錯誤のインターネットに向いていたのかも知れない。
そしてコチサには、はからずも自分で切り開いた転機がやってきた・・・・・

「久しぶりだな」
「あぁ元社長」
「今でも、社長だ」
「コチサもな、社長なんだよ」
「わかってる」
「・・・・・」
「で、どうなんだ、最近。羽振りがいいみたいだな」
「まぁな」
「雑誌で緊張して表紙を飾ってたな」
「女優じゃないから緊張もするべ」
「おっ動揺したな、訛ったぞ」
「発声練習もホームページに取り入れて頑張ってるな」
「良く知ってるな」
「一応な、お前のやってること知っておきたいから、頑張ってコンピューターの勉強してるんだ」
「社長がか?」
「あぁ、驚いたか」
山猿コチサの胸が痛んだ。
そうなんだコチサは元々山猿なんだ。
社長がコチサの為に、慣れぬ手習いをはじめて、コチサは胸に来るものがあるけど・・・
この気持ちは気持ちとして、ありがたく胸にしまっておこう。
コチサは暖かい社長の事務所で育てられ、独立はしたけれど、今も優しい眼差しに守られている。
でも山猿は山猿。野生に戻されなければならない。コチサが自分自身の手で見つけた、まだまだ荒れ放題のインターネットという野生に・・・・

「社長、さよならだ」
「ん?」
「コチサは野に帰る」
「・・・・・・」
「コチサはなぁ、ここで立たなきゃ、もう一生足が使えんばってん・・・」
「もういい、動揺するな」
「あのなぁ・・・親離れっていうか・・・」
「・・実は仕事が忙しくなってな、当分ここにも顔を出せなくなりそうだから、今日は挨拶に来たんだ、お互い社長同士だから、なかなか時間の調整も出来ないからな」
本当にこれで、さよならなんだ。
お互い旅立ちの時なんだ。でも人生って急転直下だよな。

「じゃぁな」
「ちょっと待ってけろ」
「何だ、今度は」
「コチサにも社長の優しい気持ちはわかるぞ、辛いのを押さえて無理して・・」
「別に俺は辛く無いぞ!」
「言うな、みなまで」
「言うなって、言っちゃたよもう」
「見せちゃる」
「何を・・・」
「照れるな、もう、第7章から引っ張って来たんだから」
「だから、何だ」
「おっぱい見せちゃる」
「いらん、そんなもん」
生涯の別れかも知れないこの時を、相変わらずこの二人のばかものたちは・・・・・
果たしてもうこの二人の出会いは無いのか?
そして誰も見てくれない、山猿のおっぱいの行方は?


◆コチサの寸評

出たな、久々のおっぱいフェチが。
えっ〜なんで、社長と別れちゃうのよ?そこら辺の心理描写がいかにも刹那的だよ。
今回、あんまり練らないで書いたでしょ。
次回で、「コチサと社長が感動の再会」なんてストーリー書いてきたら送り返すからね。
で、ファンも一気に増えてきた「コウ」さんからのメッセージも特別掲載。


◇コウさんからのご挨拶

「育成作品」に掲載していただいてありがとうございました。
もしかして、「育成作品にしたからもう応募するな」ってことじゃ無いですよね。
今回は、物語にしにくいテーマだよ。完璧に時間稼ぎか、初期段階のストーリー分割のミスだよね。僕たちは、コチサさんのしっかりしたテーマに沿ってしか動けない駒なんだから、しっかりしてちょ。


◆コチサの再登場

やな奴!


[第10章次点作(その2)]
(爽やかに春を告げる「つぅ」さんの作品です)
氏   名 益田沙稚子
住   所 http://www.bekkoame.ne.jp/~kochisa/
連 絡 先 kochisa@ppp.bekkoame.ne.jp
生年月日 1970年12月21日(射手座)
インターネット履歴
平成7年11月 大いなる飛翔を賭けてインターネットデビュー決意
平成7年12月 プロバイダBekkoameと契約
平成8年1月 写真撮影ロケ、HTML修得、コンテンツ企画、作成
平成8年2月 第1稿Upload、記念すべきデビューを飾る
平成8年3月 アクセス数増加を計るべく、各種サーバに登録。
平成8年4月 アクセス数伸び悩みながらもメール数漸増。
平成8年6月 中傷メール等増えるもネットワーク上支持者大。
平成8年8月 雑誌インタビュー受け、掲載。その他各種メディア露出
平成8年10月 ネットワーク上支持者だけでファンクラブ結成可能となるもしばし様子見。
平成8年12月 インターネット上にてマルチメディア利用のトークプログラム企画
平成9年2月 インターネット上ライブトーク企画
平成9年4月 世界に向けた1大イベント「Voice Presentation by コチサ」企画、大いに当たる

◇偽コチサの寸評

ん〜、さすが「つぅ」さん。プロは一味違うって所を見せつけられてしまいました。
(ところでなんの「プロ」なんでしょう?)
前回の公開添削もあって今回はガッチリ堅い路線で押さえてきました。
やはりこの章になるとこういったアイディアが必要ね。
ステキすぎよっ。


◆コチサの寸評

もう読んでる方はよくわからないでしょ。
「つぅ」さんは、この章のタイトルごとHTMLファイルで送ってくれるのよ。
それも「第10章の育成作品」として「コチサの寸評」まで付けて・・・・・
で、コチサのしたことと言えば、「育成作品」から「その他の作品」へ移して、この本当の「コチサの寸評」を付け足したことだけ。
「つぅ」さん、これ以上複雑な仕掛けは読んでくれる皆さんにうまく伝わらなくなるからもうダメよ。
別なアイディアで挑戦してきてちょ。


[第10章次点作(その3)]
(投稿5回目で初掲載、山梨の「虚無僧」さんの作品です)

「悔しかったんです。僕たちのような人間には「無視」されるのが、一番辛いんです。中学校や高校の前で、コート一枚で立っている時も、「キャァー」とか「すごーい」とか、時には「小せー」とか言われたほうが、まだ嬉しいんです。それをあいつは無視したんです。それも徹底的に。避難されたり、踏みつけられたり、毛嫌いされたり、そんな形でも相手の頭の中に意識されれば生きている実感が涌くんです。無視されることは、あいつの中では空気のような扱いしかされていないことになります。いや空気の方がまだましです。そばにいけば吸ってもらえる可能性があるからです。でもあいつは・・・・僕の文章を無表情でドラックしてごみ箱に捨てたのです。それも捨てるだけなら、僕にはまだあいつのごみ箱の中で生きているという喜びがあります。でもあいつは間髪入れず、ごみ箱を空にしたんです。いやもしかしたらそれだけでは飽きたらず、復活さえ出来ないようにユーティリティソフトでめちゃくちゃに切り刻んだかも知れません。ハードディスクを初期化するとか、そんな手間をかけるほど僕を嫌ってくれるのならまだいいです。でもあいつは簡単な作業だけで僕を抹殺したのです。完全無視です。何通も何通も僕は送りつけたけど、何のアクションも起こさず、何事も無かったようにホームページ上からは明るい声を話し続けていたんです。

そんな頃、あいつのインタビュー記事を見たんです。
「素敵なメール友達に恵まれて楽しく過ごしています」
「嫌なメールですか?幸いなことにコチサにはありませんね」
・・・・・

何かが音を立てて崩れました。僕は本当にこの世の中に生まれて来たんだろうか?もしかしたら僕の存在は他の誰からも見えないんじゃないか?僕の存在は実は僕が勝手に思っているだけで、本当は存在してないんじゃないだろうか?
考え続けていたらどうしようもなくなったんです。これは確かめなくてはいけない。僕の存在がこの土地の人々の生活に影響を与える事になっているのか?それとも僕が何かをしたと思ったことは幻で実は誰にも影響を与えていないのか?
いったんそう思ったらもうどうしようもありませんでした。僕の起こす行動は単に相手の体をすり抜けてしまうだけのものなのか?僕が相手をどんなに傷つけたと思っても相手はピンピンしているのか?
この東京中の1000万人の人々に戦いを挑まなくてはいけないと思いました。
折しもその夏は記録的な猛暑で東京の水不足は深刻化していました。東京中の人々の生命の源となる水が危機に直面していたのです。これはチャンスだと思いました。利根川水系をたどるとそれはそれは複雑な獣道に行き着きます。そこを上ると本当に小さな泉の涌き口があるのです。その一点がまさしく川の流れの源なのです。3日かけて僕はそこに行き着きました」

益田沙稚子の名を一躍有名にし、世界中の注目を集めるに至った、一変質的ファンによる「一千万都民飲料水汚染計画」の供述はいよいよ核心部分に近づいた。

「その水源は僕の足下から、本当にちょろちょろという感じで流れ続けていました。「ここで僕の存在が問われるんだ」そう思うと体が歓喜に震えました。「僕の存在が真実なものなら東京中の人間の体の中へ僕のDNA細胞がばらまかれるのだ」そう思い僕は大きく深呼吸をすると、ズボンとパンツを引き下げ、その水源に「う×こ」(コチサ規制)を放ったのです」


軽犯罪としての立件さえも難しい一変質者の行動は、その特異性でマスコミには大いに受け入れられた。
またその原因を作ったと言われる「Hなメールを無視し続けた益田沙稚子のホームページ」は、不本意ながらも注目を浴び、ここに来て益田沙稚子の名を一気にブレイクさせたのであった。


◆コチサの寸評

こらこら、虚無僧さんは仮にも仏に仕える身分でしょ。
最後の「オチ」がコチサ好みじゃなかったら、5回連続の落選だったのよ。
でもこの種の話しってよくあるよ。だからコチサの成功が自分の力でなく、マイナスになりそうな事件に巻き込まれたところから始まったという、逆説的な展開の構成の方をかいました。
ちなみに、これを読んでいる小学生のファンの為にひとこと、川に「う×こ」が混ざっていたって、飲み水になる頃にはなんの影響も無いからね。(川の中にはもっと嫌なものだって入ってるんだぞ!)