「コチシム」第11章次点作品

第11章のナイスな「コチシム」作品群

やっぱりここまで来ると、常連さんが強いよね。
ほとんど自由課題に近い世界になったから、
思う存分個性を発揮してくれて、
読んでても楽しくて・・・・


[第11章次点作(その1)]
(もう一人の巨匠、「グッド、ぐっど」さんの作品です)

それは、奇妙な仕事だった。
ひと気の無い休日のオフィス・ビルの一画で、コチサはマイクに向かい、ヘッドホンから聞こえる発音指導にしたがって、与えられた英語の辞書の単語を順に読み上げているのだった。。。

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さかのぼること4ヶ月。
マッキントシュのシェアがついに5%を下回ることが確実となり、業績回復の展望を見出せないアップル社の経営陣は、捨て身の作戦に出た。新会長に抜擢されたのは、「残り5ヤードからの逆転劇を期待できる、世界唯一の男」、ジョー・モンタナ。
アメリカン・フットボールの名門49ersで活躍した、あの伝説のクォーターバックである。

業界に驚愕と疑問の声が渦巻く中、彼はすぐに行動を開始した。
シリコン・バレーのハイテク企業や研究所を次々と訪問してゆくジョーはどこでも歓待を受ける。地元のベイ・エリアではもともと彼の人気は絶大だ。本来ならライバル関係になる会社でさえ、サインや記念撮影と引き換えに、容易に最先端技術を解説付きで披露してくれたり、協力を申し出てくれるのだった。

スタンフォード大コンピュータ科学研究所を訪れたジョーは、さえない助手チャックと出会う。
彼は音声データからその声の持ち主をコンピュータ上に再現する、一種のヴァーチャル・リアリティの研究を進めていた。
たまたまWebで見つけた、音声データを大量に公開していたホームページを使ってデモンストレーションが行なわれたが、スクリーン上に表示されたのは漫画アニメに出てくるような女の子だった。
チャックはデータの質と量が足りないと言うのだが、いずれにしても、膨大なデータを集めるのにも、またそれをすべて処理するのにも、チャックが使っている旧式のワークステーションではパワー不足は明らかだった。じっとスクリーンを見つめるジョー。。。

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そして、東京のコチサに仕事の依頼が届く頃、ひそかに進められたプロジェクトがすでに仕上げの段階に入っていたのである。

品川の駅に程近いそのビルのスタジオで辞書を読み上げているコチサの声は、ソニーの音声処理技術で即時に解析・デジタル変換され、専用回線でシリコン・バレーにある同社の研究所へ、そこから臨時に敷設された回線を使ってシリコン・グラフィックス社を経由、傘下のクレイリサーチ社で待ち受ける並列接続された100台もの最新型スーパー・コンピュータ群へと飲み込まれていった。

グラフィックス・ワークステーションが、最終出力を表示しはじめた。まるでテレビの生中継のようなリアルな女性の映像が現われたかと思ったとたん、ニッと笑ってスクリーンからジョーとチャックにウィンクを送ってきた。

ハロー、KOCHISA、ウェルカム・トゥ・サイバーワールド!
ジョーは生まれたばかりのヴァーチャル・クイーンに挨拶した。
これからちょいと忙しくなるけど、まァ気楽にいこうぜ。

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マジック・ジョンソンから野茂英雄まで、小生意気なKOCHISAにかかってはカタナシである。
彼女のヘリクツにやりこめられたあげく、「もっとマックでお勉強してらっしゃい!」と片づけられる。。。

本当なら、台所事情の苦しいアップル社にはスター選手たちに支払うコマーシャルのギャラなどなかったのだが、シリーズの口火を切ったKOCHISAとジョーのスポットが子供たちに受け、さらにかつてのチームメイトを始めとするフットボール仲間たちが応援のために出てくれたNFLプレイヤー編でも好評を獲得、おかげで他のスポーツの有名選手たちからも「安いギャラでいいから、俺も出してくれ」という依頼までくるようになってきて(どうやら自分の子供にせがまれているらしい)、このCMのシリーズは当分続きそうな勢いである。

CMではパワー・マックのスクリーン上でエラそうにそっくり返っているKOCHISAも、どんどん増殖している。
CMと同じように何でも受け答えをする、というわけにはいかないが、そのかわりにパワーブックでも充分に動かせる軽いデータを持たせたサブセット版「KOCHISA」がWeb上で公開され、いまやどのマックにもお馴染みのソフトとなった。
おまけに、Tシャツやらマウス・パッドやらのキャラクター・グッズのライセンスの申込みまでが殺到しはじめている。

そしてなによりも、マッキントッシュはウィンドウズ帝国に奪われたシェアを急速に回復しつつあった。
生産ラインをフル回転しても受注残は増える一方。
「モンタナ・マジック、アゲイン!!」という見出しをつけた新聞さえある。
とはいえ、ビル・ゲイツがこのまま黙っているはずはない、とジョーは冷静に考えていた。。。

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前兆は成田でも感じられた。アメリカン航空サンノゼ直行便の機上では、乗客の視線が全部自分に集まっている気がしていた。
だけど、まさかこれほどだなんて。。。町中で指をさされ、名前をささやかれる。だれもが私を知っているみたいだ。
うーむ、最初は、大好きなマックの普及に少しでも力になれるのならと、軽い気持ちでOKしたんだけど、なんか、とんだことになってきたわ。こうなると、英語でうわさされても聞き取れないのが救いよね。。

e-mailでは「次はスペイン語とフランス語のバージョンを準備したい、ドイツと中国からも要求が来てる」なんて話だったけど、日本語版のリリースは待ってもらわなくっちゃ。
突然こんなブームになっちゃったら、オチオチ表も歩けやしないし、かといって沈静化するまで日本を脱出する、ってのもねェ。。。

時差ボケの頭でぼんやり考え込む暇もなく、迎えのリムジンがクーパティーノのアップル本社に到着するやいなや、コチサは会長室に案内された。

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ジョーとチャックに紹介され、コチサは初めてフルセット版のKOCHISAに挨拶した。
その時、KOCHISAが返してきたウィンクを見た瞬間に、鮮やかに記憶が蘇ったのだ。間違いない、彼女だわ!
あの幻のホームページで私に片目をつむってみせたのは。。。

顔色を変えたコチサを見て、はじめはいぶかしそうにしていた二人も、コチサの話に興味を持つ。チャックはコチサがそのホームページを見た時期には自分研究がほぼ完了していたことを認めたが、ヴァーチャルKOCHISAはまだ誕生していたはずはい。
だいたいこの子は、今だに日本語すら話せないのだ。

チャックが音声の解析データを遺伝子のように扱うという彼の手法をコチサに解説している傍らのディスプレイ・スクリーンの中では、いつもならノーテンキに振る舞っているKOCHISAも今日は真剣に考え込んでいる。
ジョーは極めて論理的に、もしも以前に別のKOCHISAが誕生していたのならば、
そのためにはかなりの量の音声データが必要だったはずだ、と指摘する。
コチサは思い当たったとある事実に愕然とした。まさか、そんな。。。


◆コチサの寸評

何と、こういう謎解きだったのね。
そして両親の秘密は次回で暴露、ということなんでしょうけど次回はもう最終回だよ。
一番辻褄が合うのは、「グッド、ぐっど」さんの連続受賞なんだけど(作品的にもとっても素敵だし)、これだと他の人がはっきり言って不利になるもんね。
だからあえて、前頭筆頭に留まっていただきました。
でもこの話し素敵だね。夢があるし、コチサの認知をこういう形で展開していくなんてさすが「グッド、ぐっど」さんのセンスだね。
でも、モンタナさんではアップル再建は苦しいかも・・・だって今の所、深夜番組で自分で考えた「腹筋鍛錬器具」を夫婦で売るくらいの商才くらしか発揮してないよ。


[第11章次点作(その2)]
(爽やかに春を告げる「つぅ」さんの作品です)

「やったわ、ついにやったのね!」
「おめでとう、コチサ。ついにここまできたな」

割れんばかりの拍手喝采の中、コチサは世界バーチャルクイーン発表会場のすみにおもしろくなさそうな顔をしている両親を見つけた。
そう、彼らは単にコチサが有名になるのが気に入らないだけだったのである。

「それでは、コチサさんステージに上がってコメントをお願いします」
「皆さん、ありがとうございます。皆さんの応援のおかげで私もここまで来れました。また、今日まで育ててくれた両親も会場に来ております」

コチサが手を伸ばす方向にスポットが当たる。はにかみながらも嬉しそうな両親がステージ上のパノラマビジョンに大写しにされると、胸を張って世界中の人々に、大きく手を振るのだった。

「世界バーチャルクイーン」、それはMCを生業にする者にとって最高の栄誉である。
歴代のクイーンにはそうそうたる名が連なっている。コチサの苦労もついに報われたのだ。

それからのコチサは夢のような生活を送った。大きな仕事が次々とまわってくる。
その中から好きな仕事を適当に選んでいった。時間に余裕もできたのでボランティア活動も始めた。言語障害者の発声練習サポートである。多くの子供たちが天使の声に誘われるように話せるようになっていった。

活動範囲も広くなりはしたが、日本を離れることは無かった。
ここには、多くの仲間がいる。両親がいる。なんと言ってもコチサは日本人なのだ。
しかし世界中の子供たちからの誘いを振りきるのは日に日に心苦しくなってくるのだった。

今日もどこかでコチサの声がする。
しかし、美しくはつらつと響き渡るその声の裏に隠された苦悩を知る者は、まだ誰もいない..


◆コチサの寸評

「つぅ」さん、自ら認めるように三回連続の投稿で息切れとのこと。
でも最も忠実に、課題を消化しているというシンプルさで連続登場。
両親の秘密を「そう、彼らは単にコチサが有名になるのが気に入らないだけだったのである」と、思いっきり大胆に切り捨てた勇気はすごいよね。
コーヒーを飲みながら「グッド、ぐっど」さんが読んでいたら、思わず吹きこぼしただろう姿が思い浮かぶね。
今回は「偽コチサの寸評」もなく、ひっそりと送ってくれた「つぅ」さん。次回は最終回、また一波乱起こしてちょ。
別なアイディアで挑戦してきてちょ。


[第11章次点作(その3)]
(久々登場、「PEACE」さんの作品です)

期待
インターネットが私を変える
インターネットは素晴らしい
国境の無い世界
私の実力

あのなたは誰?
私を知ってるの?
私のどこが好きなの?
私の声?
それとも私自身?

私は誰?
私を知ってるの?
私のどこが好きなの?
私の声?
それとも私自身?

「すみません、パソコンください」
「どれにしましょう?」
「マック」
「お客さん、マックと言っても色々あるんですよ」
「私のマック」


目覚し時計の音で彼女は目を覚ました。
変な夢だった。
彼女はゆっくりとベッドから降り、
冷蔵庫を開けてミネラルウォーターをゴクリと飲んだ。
シャワーを出しっぱなしにしたままテレビをつけ、
カーテンを開いた。
朝の眩しい光が部屋に差し込んだ。


蝉が鳴いている
暑い
ここはどこ?
あ、私の故郷だ
海、山、街、坂道、田園、
この匂い覚えてる、
子供が泣いてる
この子は誰?
わたし?
かわいそう
大丈夫だよ、大丈夫


負けるもんか、負けるもんか、


「ねぇ、神様ってどこにいるの?」
「コチサ最高だったわ!」
「この人間のクズ!」
「絶対にあの美しい土地は売らん。」
「言うとおりにしてれば、最後は助けてくれるんだよ」
「ニーチェス、東京へ行こう」
「心配してくれる人がいるという事がどんなに心強いか知ってます。」
「しぶとい、まだ居座る気?」
「しゃべることだけを究めていけば報われる」
「益田沙稚子社長になれ!」
「いったい、誰なのよ、なんでこんな悪戯を。。。?」

負けるもんか、負けるもんか、


食べかけのチョコレートをかじる。
さっきから、電車の中でこちらを見ている視線が妙に気になる。
どこかで会ったことあるのだろうか。
でも、全く見覚えの無い顔である。
電車を降りて改札を抜ける。


あれは夢?
それとも現実?
私のホームページ
これは夢?
それとも現実?
私は誰?

「ニューヨークへ来なさい」
「祖国を捨てろとおっしゃるの?」
「コチサ、頑張って!」


部屋のドアには鍵をかけたかしら?

あいつの言葉に気を付けろ
あいつはおまえを狙ってる
あいつはおまえを狙ってる

あなたは誰?
お父さん、ずっとそこにいたの?
なんで?

「お母さんに聞きなさい」
「お父さんに聞きなさい」

あなたはそれを彼女に伝えたのですか?・・・
彼女はそれを知っているのですか?・・・
これを見てください・・・
彼女に理解できますか?・・・
私の口からいいましょうか?・・・

先日、電話がありましたよ・・
ええ、元気そうでした。


「そろそろ行かなくちゃ」
「とうとう行ってしまうのか、、」
「元気でね」
「うん、君も体に気を付けて」
「手紙書くわ」


滑走路
飛行機


ロビー
飛行場

あ、あのスチュワーデス私知ってる
どこで会ったんだっけ
そうだ、思い出した


ニーチェス、どうしよう、、、


「つまり、人は皆・・・・」

キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!


終わり


どうだ(^^)
なにがなんだかわかんないだろう
俺もわからん\[^Q^]/
たまにはいいでしょ、たまには。。


◆コチサの寸評

もう完全に観念世界に入られたのですね、PEACEさん。
でも、よくコチサのHPを研究してくれてくれていることがわかります、ありがとうございます。
「謎解きなんか関係ないよ、俺は俺のコチシムで行く」って感じが出てて、コチサは一つのメッセージとして受け取りました。
でも本当は、PEACEさん最近忙しすぎて、ゆっくり考える時間が無いんだよね。
過去3回に渡り、コチシム史上で波乱を呼び起こしてくれたPEACEさん、最終回での大波乱も期待してます。