No.017 2000.11.15
リスニングマガジン「陽だまりの宝物」に出演してくれているヘアーアーティストのモイジャさんは、6年前骨髄移植を受け、白血病から生還された方です。
近親間移植以外では世界でも例にないという、お父さんにもなられて、テレビ等のドキュメント番組でも幸せなニュースとして、何度も取り上げられました。
そんなモイジャさんが、リスニングマガジンでは、瞳を閉じあの頃を想いだすように一言一言を語ってくれています。
心の琴線と言うものには、それぞれ違いがあるようで、コチサやモイジャさん本人、スタッフ・・・
その場に居合わせた人たちが、それぞれのエピソードのなかで「うっ」と涙する部分が違います。
誰かが「うっ」と来た時の反応はそれぞれです。
急に何かに気が付いたように、窓のほうを見て何か別なことを考えているフリをする・・・
いきなり下を向いて作業に没頭するフリをする・・・
足元を見て、いかにも足が痒そうに、顔をしかめて足を掻く・・・
でも、そんな強がりもいつまでも息を止めていることは出来ない、人間の習性。
息を吸うときに「ズルッ」っとなって録音作業一時中断。
中断させた人間は照れくさそうに片手を挙げて謝ります。
そこへいくとコチサはプロ。
どんなに「うっ」っときても声を詰まらせたり、鼻をならしたりしません。
そのかわり、顔中涙と鼻水でびっしょり・・・
カット!の声が入ります。
コチサ
「なんで? 声大丈夫でしょ、鼻もすすってないよ」
スタッフ
「いや、その顔・・・いくら音声のみっていっても不細工すぎて・・・」
コチサ
「プロ意識に徹しているのに失礼だなぁ」
スタッフ
「いや、いいんだけど・・・それ以前に女であることも大事なんじゃないかなって、まぁスタッフの親心ってことで」
コチサ
「そんなにブサイクだった?」
全員
「うん!」
コチサ
「・・・」
モイジャさんの淡々とあの時を思い出す語り口は、たくさんの人の心を打ちます。
移植バンクの決まりで、モイジャさんに骨髄液を提供してくれた人はわかりません。
また、骨髄液を提供した人も、その骨髄液が誰に渡るのかは知りません。
ドナー(骨髄液提供者)は、「命のボランティア」といわれるそうです。
モイジャさんは真摯な態度で何処の誰かもわからないドナーさんに感謝をしています。
それで思いました。
ドナーになることって、ただ骨髄液を提供すことじゃないんだ。
かたや、どこの誰かわからないドナーに感謝している、
かたや、自分が誰かから感謝されている・・・
人生の壁にぶつかった時、もう絶望のふちになった時、自暴自虐になった時、こんな自分にも、どこかで感謝してくれている人がいる・・・
そう思ったら生きる力が湧いてくる。
ドナーさんと患者さん、どっちも支え、支えられているんだ。
モイジャさんが、移植一時間後の無菌室で真っ先にしたことは、ドナーさんへ手紙を書くことだった。
「ドナーさまへ
ありがとうございました
あなたにもらった命を大事にします
どうもありがとうございました
健康でいられますようにおいのりしています」
6年経った今も、この言葉には一点のかげりが無い!
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