いつものランニングコースから徒歩の帰り道、一匹の老犬が話しかけてきました。
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老犬
「お疲れさんだワン」
コチサ
「なんの、なんの(^o^)」
老犬
「毎日頑張るワン」
コチサ
「なんの、なんの(^o^)」
老犬
「ところで、わしには手刀で斬る仕草はしなくていいのかワン?」
コチサ
「あぁ、おじいさんは犬だからね、あれは猫だけだよ」
老犬
「そりゃぁ差別だワン」
コチサ
「いや、習慣というかクセだよ^-^;」
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道を歩いていて、猫が前を横切ったら、手刀でその道を斬るような真似をしなさいと、子供の頃おばあちゃんから教わりました。
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老犬
「それに何の意味があるんだワン?」
コチサ
「いや、よくわかんないけど、何かやらないと気持ちが悪いんだよ^-^;」
老犬
「しかし、手刀で斬られる猫も、気分は良くないと思わんかワン?」
コチサ
「でも、実際に斬ってるわけではないし、手元をチョコッとこうやって動かすだけだから、猫どころか一緒に人が歩いていたとしても誰も気がつかないよ^-^;」
老犬
「それじゃ、やる意味がないだろうワン」
コチサ
「だからもともと意味はないんだよ、ただ自分自身の中でそういうことをやったということが必要なんだよ」
老犬
「よくわからんワン」
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おばあちゃん子に育ったコチサは、他にも変な習慣というかジンクスみたいなものを持っています。
例えば・・・
●霊柩車に出会ったら親指を隠す・・・とか
●水にお湯を足さない
(お湯に水を足すのは良い)・・・とか
●お茶碗にご飯を盛るとき、
例え1回で一杯になっても、
必ずしゃもじはカラよそりで
もう1回かぶせる・・・とか
●靴下を履いて寝ない・・・とか
●夜爪を切らない・・・とか
数えだしたらきりがありません。
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みんな無意味な事だとわかっています。
でもコチサは、何故かどれもやめられません。
やらなかったらバチが当たるとも思っていません。
いや、もしかしたらバチが当たるのが怖いのかもしれません。
でも、コチサがそれを続ける一番の理由は、おばあちゃんに教わったことだからです。
おばあちゃんが、そのまたおばあちゃんに教わって、死ぬまで続けていた事だからです。
意味の無いおばあちゃんの知恵袋みたいなものですが、コチサはその意味のない事に意味を感じるのです。
なんかそれをすると気持ちが良いのです。
無意味とわかっているけど、やると気持ちが良いし、やらなかったり反対の事をしてしまうと後味が悪いのです。
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老犬
「そうなのか、なんとなくわかる気がするワン」
コチサ
「そなの?」
老犬
「わしにもあるワン。例えば電柱におしっこをする時、先に3回、後に2回匂いを嗅ぐとか、散歩の最後は尻尾を3回振るとか・・・全てわしの祖母から教わったことじゃワン」
コチサ
「他の犬はやらないの?」
老犬
「あぁ、多分わしらの一族だけじゃろうワン」
コチサ
「ふーん、犬も人間も変わらないんだね」
老犬
「先祖代々があって、今の自分がいるというのはどんな動物も同じじゃろ。そして先祖を敬ったり、懐かしく思ったり、誇りに感じたりするのもみんな同じじゃワン」
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何かがうまく行かなくなった時、コチサは思い返して見ます。
「何か最近、やらなくなってしまった事があるのかな?」
そうして思い当たる事があると、早速元に戻します。
うまく行かなくなった事がまたうまく行くようにるのは、それが原因では無いと思います。
でもそれが原因と考えても良い気がします。
自分は先祖代々の家族と繋がっていて守られている・・・そう感じることが、コチサには一番良い気持ちになれて前向きに生きられることだからです。
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コチサ
「それにさ、街で時々、変なことしている人に出会うでしょ、でもそれもきっとその人なりのジンクスなんだって思うと、なんか微笑ましくなってこっちまで良い気分になれるんだよね(^o^)」
老犬
「そういえば随分前、背中をかいている仲間がいたワン。それで『よかったらおかきしましょうか』って聞いたわけだワン。でもそれは仲間の食事前のジンクスだったんだワン」
コチサ
「ふーん」
老犬
「でもまぁそれがきっかけで、そいつは今のわしの女房ってわけだワン」
コチサ
「・・・なんだノロケかよ^-^;」
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コチサランニングロードを横切る猫の皆さん。
その度にいちいちコチサに手刀を斬られても、別にそれは悪気があるわけじゃないのでよろしくね(^-^;